登録番号/No.1077-1
タイトル/GO!
作詞/LEICA
作曲/LEICA
作詞完成日/2026年10/24
GO!
たたたた ざっ ざっ 白い息が三つ 細い尾根を歩いていた
かちり かちり「ちゃんと掛けたか」
小さな手が僕らの真似をする 彼の目尻が ふっと下がって 僕の肩を とん とん
昔からそうだった 大事なことほど 口にしない男だった
ずるっ それだけだった 空と地面が入れ替わり 白いものが舞った ぱら ぱら ぱら
小石は先に 見えなくなった ぎし 誰も喋らない ぎし
三人分には 少し細すぎる音がした
彼が上を見る 僕は下を見る 彼が僕を見る 僕は銀色を見る
かちり 「……あるな」「ああ」「どうする」答えの代わりに ぎし
切れば軽くなる それだけは 三人とも知っていた
誰も名前を呼ばなかった 呼べば何かが 決まってしまう気がした
さら さら 白いものだけ降ってくる 時間には音がないくせに
もうないことだけ よくわかった
「ねえ」下から声がした「僕のを切って」彼の頬が ぴくりと動いた
「僕、軽いから」
何を覚えたら そんなことが言えるんだろう 彼は怒らなかった 僕も怒れなかった
ただ ぎゅっ 銀色を握った
「おまえ、できるか」「できるわけないだろ」「俺もだ」
妙なところで 意見が合った 昔から そういう時だけは よく合った
彼の口元がゆるむ 僕の口元もゆるむ 下から「なに?」と聞こえた
ぎし ぎし あと何回 この音が鳴るのだろう 彼の手に銀色 僕の手にも銀色
「せーの、は?」「いらないだろ」「だな」
とん とん 彼が僕の肩を叩く 僕も彼の肩を叩く
それが最後に交わした いちばん短い会話だった
かちり 風が ごう と鳴った ふっ 何かが軽くなった
あんなに狭かった空が 急に どこまでも広くなった
「ねえ」声がした 「ねえ!」何度も 何度も 誰かの名前を呼んでいる
その声だけが 遠ざからなかった
ずっと後になって あの日のことを 訊かれるたび 僕は うまく答えられない
ざっ ざっ かちり ずるっ ぎし とん とん 言葉にすると どれも違ってしまう
ただ ひとつだけ覚えている 二人とも最後まで 僕のほうを 見なかった

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